第16章

大島莉理が叫ぼうとした瞬間、黒い影に口を塞がれた。反射的に肘を叩き込み、手応え。肋骨のあたりに、ぐっと入った。

影が「ぐっ」と息を詰める。その声が、妙に聞き覚えのある響きを帯びる。

「……手加減なしだな」

田中尚哉はそのまま彼女を抱え、リビングへ運び込む。鍛えられた腕で逃げ場を奪い、ソファに押し付けた。

灯りはついていない。リビングは薄暗く、顔は見えない。

それでも罵るには十分だった。

「……何考えてんの。頭おかしいんじゃない?」

わざと怖がらせた、としか思えない。

田中尚哉が喉の奥で低く笑う。

「知らない男が来たら、どれくらい警戒するのか見たかっただけだ」

「どいて」

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